2016年度第4回パラグアイ渡航で考えたこと(1)

2016年度SVパラグアイ渡航【8月26日-9月26日】で考えたこと
つれづれなるままに、と題したこのページでは、1)私個人としては23年目に入ったパラグアイとの関わりの中で新たに見出したパラグアイについて、2)「学生たちの学び」から「私が学んだこと」について書きたいと思います。
パラグアイは2010年に13.1%の経済成長を遂げ、その後もラテンアメリカ諸国の経済が失速する中で順調な経済成長を遂げています。
 
1.学生たちだけでも渡航できる
今回の渡航期間は2016年8月26日-9月26の計32日間で、約一か月にわたる渡航でした。例年、出発時には私が一緒に参るのですが、今年は学内での仕事と重なり同時に出発できませんでした。しかし、参加学生たちは不安少々、元気一杯、パラグアイの日系パラグアイ人留学生のウイルソンくんの旗振りのもと無事旅立っていきました。大役を担ってくれたウイルソンくんには感謝の言葉もありません。一方、これまでの渡航を振り返ると、ややもすると過保護だったのかもしれません。学生たちは自分たちで南米大陸まで当たり前ですが行けるということでがわかりました。振り返ると2014年度の第二回パラグアイ渡航に送れて参加した(2回目の参加)広瀬がんちゃんは1人でアスンシオン国際空港までたどり着き、空港職員の携帯電話をちゃっかり拝借して、私に電話をかけてきたことが昨日のように思い出されます。彼は現在、青年海外協力隊隊員としてグアテマラのモモステナンゴで小学校教員をしています。やればできる、ということを私自身も改めて学びました。
2.国際協力の実践:クラウド・ファインディングの成功
これまでも現地で活動する複数の国際NGOと連携した活動を行ってきました。農村における生活改善活動としての栄養指導や音楽の授業・理科実験・調理実習、社会調査としての世帯調査などを含めたフィールドワークなど横浜国立大学の授業の中で学んできたものを現場レベルで現地の方々の目線に立って展開する努力をしてきました。また、M地区で私が代表を務める国際NGOの活動の一環として2015年10月より小学校の第二校舎を立てるプロジェクトを行っていました。しかし、豪雨や資材の高騰、子どもたちの給食がないためにそちらの支援を優先するなど、さまざまな要因により建設資金の不足に陥り2016年1月より学校増設がストップしてしまうという状態がおきました。人数が増加しているM地区の小学校では、先生方の自助努力により木造の臨時校舎を設置し、その中で授業を行っていました。臨時の木造校舎は隙間だらけの小さな小屋であり、雨風も防ぎきれないような状態です。冬は寒く、夏は暑くなりすぎてしまうので、子どもたちは到底勉強に集中できる環境ではないわけです。当時、横浜国立大学教育人間科学部2年(当時)でゼミ生だった久喜淳史さんは現地インターンを希望し、パラグアイに残りましたが、そのことを強く感じたと綴ってくれました。そこで久喜さんたちが中心となり、第二校舎の建築資材の不足分を補うためにクラウド・ファンディング(CF注1)に挑戦しました。藤掛研究室の卒業生たちも関わってきたプロジェクトということもあり、多方面から経験と知識を伝授することができ、第四期生たちの尽力によりこのCFは大成功を収めました。
正直なところ、私はCFに対し当初は3つほど懐疑的な視点を持っていました。CFは、第一にプロジェクトがキャッチー(きまぐれ・挑発的とでもいえば良いのでしょうか)なものに対しては賛同・共感されるが、非常に重要であるが地味なものには共感されにくいのではないかという点です。これは研究においても基礎研究がないがしろにされることに共通しています。話は少しそれてしまいますが、2016年10月に大隅良典・東京工業大栄誉教授にノーベル医学生理学賞の受賞が決まり、彼と彼のパートナーの大隅万里子教授は基礎研究の重要性を発信されていました。ですので、CFのキャッチーなものにしか支援が集まらないというものには今後も注視していく必要があるのではないかと感じた次第です。第二に、インターネット上での資金調達であるのでインターネットにアクセスできない世代はかやの外におかれるということはまぎれもない事実です。この点についてはこれまでの国際協力の地道なスタイルも維持しつつ、この活動を併用していかなければならないだろうという点です。第三に、3)個人情報などが操作されるのではないかという危惧です。他にも言い始めれば多数ありますが、一先ず懐疑的だったことをここでお伝えします。
ところがCFに成功をしたわけですから私自身の国際協力にあり方に対するまなざしは大きく変わらざるを得ない状況に陥りました。
いずれにせよ、第四回目の渡航でも私は学生たち、そして応援して下さる大学関係者、パラグアイやブラジルの仲間たち、教え子たちの支援がなければこの渡航は成り立ちません。心から感謝しております。この続きはまた書きたいと思います。
注1.クラウド・ファンディングとは、(群衆:crowd)からインターネットを経由して資金調達(funding)を図ることをいう造語であり、ソーシャルレンディングとも呼ばれる。金融庁は、新規・成長企業へのリ スクマネー供給促進を目的として、2014年に金融商品取引法等を改正し、クラウドファンディ ングの環境整備を実施している。