横浜国立大学藤掛洋子研究室XJICA横浜連携講座「格差を体感してみよう!」

実施日時:2023年12月17日(日)13:00~17:00

実施場所:横浜国立大学都市科学部棟104

参加者:横浜国立大学都市科学部2年生、森村学園高等学校、英里女子学院高校、都立拝島高校

主旨説明

 2023年度も横浜国立大学(YNU)×JICA連携講座として、藤掛洋子教授と都市科学部都市社会共生学科海外研究(藤掛)スタジオ生による世界の課題について考えるワークショップを開催いたしました。今年度のテーマは「格差」です。貿易ゲームを通して、経済格差が拡大していく仕組みを体験的、共感的に理解してもらったうえで、「ジェンダー」「教育」「食糧」の格差について知り、格差について考える機会を設けることを目的としました。

<各班の発表内容>

●「ジェンダー」

 ジェンダー格差について、ディスカッションを交えながらワークショップを行いました。はじめに、大学生よりジェンダー格差とその具体的な事例について説明しました。そして自分たちの体験や事例をもとにディスカッションしてもらい、格差が生まれる構造について考えました。次に、ポジティブアクションについて説明しました。ポジティブアクションは、格差を埋めるためのアクションではあるものの、逆差別になってしまう可能性があります。それについてどう思うか、本当に有効なのかといった点もディスカッションしてもらいました。最後に、「下駄を履く」という例えについての説明(置かれた状況が違うにもかかわらず同じルールを適用することや、同じ競争に放り出すことは、必ずしも社会的公正とは言えないということを分かりやすく説明)しました。

●「教育」

 教育格差について、ワークショップを実施しました。ワークショップではまず初めに教育格差の定義と、日本と世界における教育格差の現状について紹介し、そうした教育格差はなぜ起こるのか、どのような原因が考えられるのかについてディスカッションを行いました。また、教育格差が顕著に現れる、高校生にとって身近な「受験」が、「経済的」「地域的」「構造的」な要因に大きく左右されていることを、具体的な数値や実験結果を基に明らかにすることで、教育格差をより身近に体感してもらいました。そして「当事者」の視点から、その解決方法についてディスカッションを行い、「私たちの答え」をそれぞれで共有しました。

●「食糧」

 貿易ゲームで感じ取った、途上国と先進国に生じる「差」の中で、「食糧格差」に注目しました。導入で日常の食生活を振り返り、そこから世界中で生産されている作物として、小麦を取り上げました。データをもとに農業生産能力の格差を紹介し、この格差がどういった要因で生じるかというテーマでワークショップを実施しました。そしてワークショップの結果を共有しつつ、人や設備といった長期的な投資が重要であること、また農薬の大量使用や遺伝子組み換え作物は地球環境に影響を及ぼすリスクがあることをプラネタリーヘルスという概念を用いて学びました。

参加した中高生のコメント(一部編集)

・このワークショップに参加でき、とてもよい経験になりました。自分の考え方を共有したり、先輩の調べたことや考えを知ったりすることで新しい視点でものを見ることができました。また、貿易ゲームを通して少人数であるのに、他国との関わりが難しく感じました。もし本当に国を支える立場になった時、他の国との関係など考えるべき点も多くより難しく大きな問題になるだろうと思いました。そして、今回私が感じた以上に「格差」が顕著に現れるだろうなと考えました。

・貿易ゲームで格差について体験することによって、授業で教えてもらうこと以外に自分か ら湧き出てくる感情からも格差の問題について学べたことがとても新しく、心に残りまし た。楽しく社会の問題に触れることができ、自分も何か社会に対してアクションをとって みたいと思えるような時間になりました。

・格差とだけ聞くと、わたしは恵まれない国の子どもであったり、発展途上国などを想像しますが、実際格差というものは私たちの身の回りでも存在しているもので、受験環境や家庭 環境もその一環であるということを学びました。直接的で解決することが難しくても、間 接的にでも誰かが悲しい思い<まま>をしないような行いをしていきたいと考えました。

学生コメント(横国)

参加した生徒たちは、貿易ゲームと「ジェンダー」、「食糧」、「教育」という身近なテーマで話し合うことで、身近に存在する「格差」に気づき、真剣に考えて、積極的に発信してくれました。今回の連携講座の中で行った貿易ゲームでは、独自のルールの追加や中高生との議論を行うことで、抽象的なテーマである「格差」をより身近に感じることができました。また、中高生に三つのテーマで「格差」を伝える際、言葉選びや伝えるプロセスを考えないと、伝えたい話に持っていく上で苦戦するという気付きもありました。「受験」、「小麦」など高校生にとって興味を持ちやすいテーマから「格差」にアプローチできたことは非常によかったと思います。たくさんの学びがある非常に有意義な時間だったと思います。授業の中でしっかりと準備をし、高校生たちに格差の問題をミクロレベルからマクロレベルまで一定程度伝えることができたのではないかと思います。ご協力いただいた皆様方に心より感謝申し上げます。

◆講師

横浜国立大学都市科学部

藤掛 洋子都市科学部長・教授

★企画学生

 横浜国立大学都市科学部2年生+都市科学部生・経営学部生

2年生:伊藤広登・樫村小雪・片桐綾乃・蔵重光希・更屋七海・湯浅亜優・大岩宏基・河上士友羽・岩本日向子・別府李郁・原口瑞稀・大柿夕七・尾崎ゆう・朴俊弘・秦涼馬・米山心

◆参加校

森村学園 高等部(6名)、OB (2名)、(担当 塩尻章博教諭)、英理女子学院高等学校(4名)(担当 矢吹智美教諭)、

都立拝島高校(1名)